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大阪拘置所刑場検証の記録(1951年)

大阪拘置所刑場検証の記録

1951年(昭和26年)8月2日、松下今朝敏・川井春雄両名に対する強盗殺人被告事件で、東京高裁刑事1部は大阪拘置所の刑場を検証しました。その記録が向江璋悦著「死刑廃止論の研究」(法学書院、1960年)391~393頁に掲載されています。ここではその内容を抜粋して引用します。

検証調書(昭和26年8月2日)

《引用開始》

検証調書

(冒頭略)

第1 検証の場所及び目的

前記大阪拘置所内の死刑執行場につきその構造死刑執行方法の模様を検するにある。

第2 検証の結果

(1)立会人玉井策郎の指示説明

立会人玉井策郎は「死刑囚が執行場に入ってから執行を受け絶命に至るまでの経緯を説明します。先ず死刑囚を当日指定時刻前にこの仏間に連行し検察官、検察事務官も立会の上拘置所長より本日死刑執行する旨告げ、立会の教誨師等によって読経し焼香した後教育課長より死刑囚に対し遺言の有無を尋ねその事情を立会の職員が録取し本人に読聞かせます。その際これ迄の例によりますと死刑囚の多くは信仰についての信念、犯罪及び被害者等に対する懺悔、被害者の冥福を祈る等その心情を述べるようで、そのような事情も立会職員は参考のため録取します。それから死刑囚は教誨師と共に最後の読経をし別離の握手を交わすのが普通です。なおこの際饅頭等の菓子を与えます。以上の行為が終わりますとこの場で死刑囚の面部を自分にて蔽い施錠の上立会職員がこの刑壇に連行しこの絞縄を首にかけます。

絞縄は身体の長短により調節し床板が落下した際地階コンクリート上5寸位の高さの処に足底が下るようにし又絞め方は体重によって調節しております。

このような準備が調ってから刑務課長の合図によって執行担当者がこのハンドルを引きます。するとこのように床板の片側が外れ落下し身体が垂れ下る訳です。この床板が落下するときの音響は非常に強大なもので、このように周囲の硝子戸の硝子にきずができているのもその為です。それからこの床板落下直後立会の法務技官(医師)が脈搏を触診し脈搏が緩徐となり結滞を生ずるに及び胸部聴診を行い心音の全く停止せる瞬間と落下後の所要時間とを秒時計によって計測し絶命した旨を拘置所長に報告します。

その後5分経過して瞳孔を検し刑死者の身体をここに敷いてある莛の上に横臥せしめて後縄を解くのです。

次に死刑囚がこの執行場に入場してから最後の焼香迄の所要時間は3、40分であり又死刑執行の所要時間は約15、6分です。」

と述べた。

(2)依って検すると

大阪拘置所内における死刑執行場の間取、模様等は別紙見取図及び添付写真(5葉)の通りである。

その様式は所謂地下垂下式絞縄法で屋上梁木より垂下式絞縄を取下げ梁木に附着する轆轤によって身体の長短により調節するようにしてある。

(添附写真の1参照)しかしてこの絞縄の長さは2丈5尺あった。

次に床板はハンドルを引くことによってその支えが外れるためその3方が地階に落下する仕組みになっている(添附写真の2及3参照)又床板落下の音響による硝子のきずは周囲の硝子戸に多少ぽつぽつとあるのを認めた。

次に地階の模様は添附写真の3乃至5の通りでその高さは1間半であることを認めた。

この検証は前同日午前10時10分に着手し同10時50分に終了した。

(中略)

(図面及び写真省略)

《引用終了》

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